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人魚に関する書物や物語・小説の紹介です。作者名は敬称略。
私が実際に読んだものだけを載せています。実は毒舌混じりの書評でありました。
ご存じ、アンデルセンの童話ですね。
人間の王子に恋をした人魚の娘が人間になりますが、王子は隣国の姫をお妃に迎え・・・。
どなたも1度はお読みになったことでしょう。
大人になってパラッと絵本を読み返し、仰天しました。お子様向けにしては、あまりにおえろいのです。
何よりも服を着ていないシチュエーションが多い。
人魚姫は、子供が堂々とぬうううどを見ることのできる手っ取り早い方法なのでした。
女性のだけでなく、人魚姫が裸体の少年像をめでるシーンもあります。
人間になって初めて王子と会ったときは全らでありました。
王子を殺そうと寝室に忍び込むと、そこで王子は新妻と同衾しています。
昔の純真な子供たちには、刺激が強過ぎたのでは?
もちろん今の子供はもっとどぎついものを見慣れておりますから、何を今さら人魚姫。
それよりも問題なのは、ここに描かれる恋の形です。
いわゆる『無償の愛』を打ち出したいんでしょうけど、命を救い、必死で尽くす人魚姫に比べ、王子の愚鈍さには呆れ果てます。あげく人魚姫はフラれて死んじゃうんですね。似合いのバカです。
杏野丈センセなら、どう料理するでしょうね。
男に尽くして貢いで捨てられる女って、現実にもわんさかおります。女に貢がせたあげくポイする男だってわんさか。
彼らは人魚姫を読んで育ったに違いありません。
もうひとつ大きな問題点は、口がきけなければコミュニケーションの手段を奪われてしまうという設定です。これは障害者への差別です。
お手元の『人魚姫』は即刻白いポストに投げ込みましょう。
これも有名。作者は小川未明。1921年。
アンデルセンに比べると、非道な行いに対する苛烈な仕返しがちゃんと用意されています。童話というものの基本路線を踏襲していて潔いといえましょう。
異形のものは自然を支配するなど、概して超越した力を持っているものですが、なぜそれでも脆弱で心狭い人間に頼ったりするのでしょう。
ロウソクに絵を描いたら売り上げ急上昇だなんて、商売のテクニックとしても参考になりますよ。
井上雅彦 監修(光文社)。ホラーアンソロジー。2001年。
菊地秀行の怪談時代劇、山田章博の幻想コミック、小川未明の古典『赤いろうそくと人魚』など、古今取り混ぜた人魚関連短編集。
わりとあっけないけど、それぞれいい味出してます。
人魚というものは、恋愛の対象よりも食材として扱われたほうが面白いのではないかと思えます。けど、薬剤にするとちょっとつまんないですね。
絵画集(トレヴィル社)。
ジョン・ウォーターハウスを中心に、水と女を題材にした絵画を集めたものです。ウォーターハウスの筆致はなかなか日本人の好みに合うのではないでしょうか。
セイレーン、人魚などのほか、ミレイのオフィーリアもあります。
「水辺に浮かぶ小舟の中で若い女が死にかけている」という構図は、絵画の一モティーフとして確立されているのだと、この本で知りました。
そういえば天野喜孝にも『エレインの死』という絵がありました。
ヴィック・ドンデ 著 荒俣宏 監修。創元社。
絵画やイラストをたくさん紹介して、人魚というものが民俗や芸術にどう現れてきたかを解説。といった内容だったようです。
もちろんウォーターハウスの絵も含まれています。
岩井俊二 著。1997年。近未来を舞台にした長編ファンタジー小説。文庫あり。
進化論をもとに、人魚の生殖方法を微に入り細を穿って想像し創造したということで、なかなか凄まじい力作なのですが、残念ながらあまり面白くありません。
そもそもここで扱われる「人魚」は、足が2本ある「半魚人」なのです。
半魚人って、人魚よりはランクが下(進化論的に)のような印象がありますが、半身もろサカナの人魚よりは、よっぽど人間に近い外観なんですよね。
アメリカの怪奇小説家H・P・ラヴクラフトの代表作。
人魚は出てこないけど、不気味な魚人の村に入り込んだ男が恐怖の一夜を過ごすというお話。しかし彼は実はその一族だったのです・・・。
私はかつてラブクラフトマニアだったけど、現在手元には翻訳本がないので、おぼろな記憶をもとに書いてます。
篠田節子の長編小説。1993年。
地底の湖に棲む不思議な生き物に魅せられた男が、自然環境の破壊を食い止めようと無謀な行動を起こすという、ファンタジーのような社会小説のような・・・。
その水棲生物の描写がわりと曖昧で、想像力を刺激するところなど、ホラーの手法?
そういえば、同じ作家の短編に、小さな人魚が食材として人気を博すというホラーがありました。不気味で面白かったけど、タイトルは覚えていません。
おどろおどろしいタイトルから想像がつきますとおり、ミステリーです。
司凍季著。1993年。
ヒマでヒマで死にそうなヒトは読んでみるのもいいでしょう。
地名を含むタイトルのミステリー小説が多いのは、日本人が旅情ミステリーというジャンルを好むほかに、当該地の公共図書館が必ず買い上げてくれるのも一因だそうな。ならば日本中の図書館に買わせようと、「日本殺人事件」を書いた作家もいるとか。
というと、ブラジルだのロシアだのペルシャだのスウェーデンだの英国だのと、アチラかぶれの有栖川有栖は、てんで損してるんですね。
『海のある奈良』って、いったいどこでしょう? 奈良県以外にその町の図書館から買ってもらうことも期待したのかな。
しかしま、図書館の件なら、何もミステリーに限ったことではないはず・・・。
人魚はどうしたのよ、人魚は?
スコットというイギリスの作家による、謎めいた海洋冒険小説、みたいなもの。1955年刊。
『人魚』も『ビスケット』も、登場人物のニックネームに過ぎず、人魚が出てくるわけではありません。
ブラウンはアメリカのSF・ミステリ作家です。
軽妙洒脱なSFショートショートにとりわけ才を発揮し、星新一と並び称されました。
最近ではほとんど顧みられておりません。差別的な描写や思想が、ポリティカリー・コレクトネス上問題視されたのだと推測します。
ここでブラウンに言及するのは、私の『人魚王子物語』が、彼のショートショート(タイトルは失念)をヒントにしたものだからです。ありふれた話なので、たぶん巷の小咄をアレンジしたのでしょう(ブラウンにはそういう非オリジナル品らしきものがほかにもありますが、面白いですよ)。
だったと思うんですけど、記憶あやふや。題名は『人魚伝』らしい。
人魚を拾って連れ帰った男が、毎晩人魚の餌になっちゃうというお話。人魚が食べ残しに自分の涙をかけると、男は再生して、翌朝何事もなく目を覚ますのです。いやあ、これなら飢餓の心配はありません。しかもクローン人間時代を予言してる、かも。
猫十字社のギャグコミック。1978年~。
美少年が大好きなとらじゃとかりた、ゴキブリ大好きめりた。この3人が巻き起こす、パワフルはちゃめちゃ大騒動。
人魚とは何の関係もありませんが、とらじゃと「たこのルーちゃん」のネタをいただいたので、敬意を表しまして・・・。
タコのマスコット